2013年10月20日日曜日

再びJリートが注目

 9月19日に発表された2013年7月1日時点の基準地価は、三大都市圏の商業地が5年ぶりに上昇したことで注目されました。また、複数のメディアが「Jリートが商業施設等を積極的に購入したことが地価を押し上げた。」と報じたことも印象的でした。
 Jリートとは不動産投資法人(Real Estate Investment Trust)のことで、課税の特例のある大手上場不動産賃貸業者といえばイメージしやすいでしょう。投資法人法という法律に基づいて設立され、多数の投資家に株式を発行したり、社債の発行、銀行借り入れなどで集めた資金を使って、優良なオフィスビルやマンションなどの賃貸不動産を購入し、その賃貸利益を投資家に配当する法人です。租税特別措置法において、利益の90%以上を配当することなどを条件に配当前利益に法人税が課税されない特例や、不動産流通税の軽減特例などがあるため、比較的高く安定した配当が可能になっています。
 2008年秋のリーマンショック直後にJリート1社が破たん(ただし、民事再生申請後別のJリートに吸収され、株式や債権が結果的に毀損されなかったことも注目されました。)するなどJリート市場は危機的な状況にありましたが、政府による支援措置、Jリート同士の合併やスポンサー交代、景気回復などに伴って、Jリートの信用力や資金調達環境が徐々に好転しました。その結果、今年1~8月に取得を決めた不動産の総額は約1兆5千億円と、過去最高だった2006年(年間約2兆円)を上回るペースとなっており、これが三大都市圏商業地の地価上昇に貢献したと評価されているのでしょう。2009年はわずか4000億円程度の物件取得に落ち込んでいたわけですから、市場の力というのは恐ろしいものです。今年の春にソニーやパナソニックといった大企業が自社ビルをJリートに売却して資金調達を行い、これをリースバックすることで営業を続けています。健全なJリート市場は、我が国経済を支える安定化装置としても重要といえるでしょう。
 一方で、Jリート指数や物件取得ペースの急速な回復について、リーマンショック前のようなプチバブルの再来を懸念する声も出てきました。確かにあの時期は新興デベロッパー等によるJリート設立が相次ぎ、物件取得意欲も旺盛で、Jリートが私募ファンドと争って、優良物件を高値買いしているといった批判もありました。
 この背景には、Jリートが買えるような投資適格不動産(立地が良く耐震性など遵法性に問題のないような不動産)が少なかったという事情があるでしょう。Jリート市場が大きくなるためには、Jリート自身の信用力だけでは足りず、投資適格不動産の供給を増やす必要があります。このため、立地が良いが老朽化しているような不動産を投資適格不動産に再生したり、これまで投資対象となりにくかったヘルスケア施設の情報開示を促進したり、海外の優良な不動産を取得できるようにするなどの制度整備が望まれるところです。

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